Gallery - Secret place
『秘密基地』(1/2)
1 2
帰りたい……。
あ~今日も一日帰りたい。
学校が楽しいかって。そりゃあ、嫌いじゃないけど……だるい。
何がだるいって、休み時間のガヤガヤした時間がすごく苦手だ。
別に孤立してる訳じゃないけど……これといって話す相手がいない。
あのキラキラした輪に入ってくのは、どうも私の性に合わないというか。
まあ、授業中が一番気楽ではあるけど……
あの先生は一々話が小難しいんだよね。
ほ~らまた脱線して余計な話を始めてるぞ。
――というわけで、今日は掃除当番もないのでさっさと帰らせていただきますよ。
いやっほ~う
これが私の日常だ。
お察しの通り、クラスの中では"目立たない方"の人である。
当時は少しやさぐれていた。
とにかく周りに興味が無くてずっと退屈していた。
しかし家に帰ってしまえば普通の(?)明るい女の子だ。
大体自分の部屋に引き籠ってスマホで暇つぶしするのが日課で、こんな私でもちゃっかり自撮りなんてことをして遊んでいたのだ。
ぐわ~っ 今日は盛れなくて全っ然ダメ
まあさすがにノーメイクはダメか……
……ふふ、ちょっとメイクしちゃおうっかな
何を血迷ったのか、気づけば絵具のチューブを手に取っていた。
そうだ、あの日はなんか盛れなくてイライラしてたんだ。その結果、やけになって変なこと始めたんだっけなあ。
「ロイヤルブルー」
なんとなく響きがかっこいいし、これは映える!
すごく人間卒業しちゃった感じがしてワクワクする。
そうだ――この際、かわいい動物になってしまおう。いつぞやに買ったまま放置してたうさ耳カチューシャもあるし///
ちょっとこの色――あんまりうさぎっぽくないんだけど、ここは現実とは違うファンタジー(笑)の世界ってことで。
誰がどう言おうと、私はうさぎさんなのである。
今日は気分がいいからもっと楽しいことをしよう。
模様も描き込んで本格的なメイクをしてやろうじゃないか!
[30分後]
時を忘れて没頭していたら、もう窓の外が暗くなってきているではないか。
おっと、そろそろ親が帰ってくる時間だ――さっさと自撮りして顔を洗っておかなくては。
あれあれあれ……全然落ちない……
調子に乗って厚塗りし過ぎたか?
ふぅ~なんとか落とせたかあ~
やばっ、親が帰ってきた!
あっぶねえ~!!
いや~、さっきはまさかの親フラで流石に焦ったなあ(汗)
しかしどうだ、これは久しぶりにいい自撮りができたのではないだろうか。私、天才かー?
しっかし青が落ちづらいのなんのって。変な話だけど石鹸って、ちゃんと汚れ落としてくれるんだなあ。
よお~っし、ツッタカターにアップしちゃうぞ~。
この写真すっごく恥ずかしいけど私のアカウントに限ってはどうせ誰も見てないだろうからちょっとの間だけ……大丈夫大丈夫!
今日も学校だ。私はいつも通り、休み時間をぼーっと過ごしている。
しかし、気になることが1つある。
さっきから隣の子が私の方をジロジロ見ている気がする。
ジロジロ?――いや、ガン見である。
私の顔に何かついているのだろうか。急に不安になってきた。
「あの~、今日の宿題の範囲って……」
「あ、え~っと ここの問題だったね」
「ありがと!」
なんだそんなことだったか。
しかし今日に限ってなぜ私に訊いてくるのだろうかと疑問におもいつつも、どういたしましてと心の中で呟いた。
ええっと……この人名前なんていったっけ。
今まで名前で人を呼んでこなかったせいでマジで思い出せない。
――っていうかこの子かわいいな。
こんな子と一緒にキラキラした写真でも撮ってSNSにでもアップしたい人生だった。
「それとね……」
……ん?
え……!?
その時何を言っていたかはっきりとは聞き取れなかったが、どうも昨日上げた写真について話してたような?いやいやまさか、気のせい気のせい。
「昨日の写真、とっても良さでしたぞ!」
ああ、やっぱりそうだ……
状況を呑み込めないまま狼狽しつつも
「ぅえ~↑ あぁ……そう……ありがとぉ ああ、そうだ 今日の宿題だったんだけど……」
「ねえねえ、あのメイク誰にやってもらったの?」
「あ、まあ自分でやったけども……」
興味深々かよ。話題を切り替える作成は失敗だった。
「ほえ~、そんなプレイをする人には見えなかったなあ」
「プレイ……?」
[キーンコーンカーンコーン]
「あ、ごめんね。ついつい色々問い詰めちゃったね 今日の帰りにでも詳しく聞かせてよ、二人っきりでさ」
僅か数分の出来事である。しかもなんか誘われてしまったぞ。
とりあえず、話を聞いている限りでは拡散されまくってる感じではない(?)ようだ。
まあ、どうせバレてしまったんだ。今更隠すものなんてないか。
――しかし、冷静に考えてとても恥ずかしい。あぁ~バカバカバカ!!(悶絶)
結局この日は一緒に帰って色々話をした。
私には真っ先に確認しなくてはいけないことがあった。
一体どうやって秘密()の写真を見つけたのだろうか、私は直接訊いてみた。
――それに対して彼女はこう答えたのだ。
「ああ、私好みの画像を探すの面倒になってきたからいい感じの画像を自動収集するbotシステム作っちゃったんだよね~♪」
つまりこういうことだ。
なんでも彼女はもともと"ああいうやつ"が好き過ぎて、自分の好みの画像をAIに学習させてネット上のコンテンツから自動収集するシステムを自作してしまったそうなのだ。
私がアップした"ツッタカター"なんてのは収集における恰好の的ですぐに見つかったらしい。
こんな調子でお互いに秘密を暴露してしまったのだ。
当然、このことは2人だけの秘密というお約束になった。
「バイバイ また明日~」
「達者でな」
全くなんて日だ。当時の状況とか、心境とか、動機とか何から何まで聴取されてしまった。
なにこれ、事件なの?――まあ事件だよなあ、ある意味。
ただ、嫌な気分ではない。寧ろ久々に楽しい気分だ。向こうも向こうだけど、私も彼女に興味津々なのである。
ここまで相手のことを知りたいなんて思ったことは無い。もっと「変なとこ」を見せて欲しい。
気づけば夏休みだ。当然、宿題に手をつける気も起きずに、家に引き籠っていた。
ふと、ツッタカターのタイムラインを眺めていると、知らない人から一件のDMが届いていること気づいた。
「うわっ何これ?!……」(ドン引き)
"はじめまして!急に連絡してすみません。明日暇ですが?もしよかったら、その……プレイしません?連絡ください!"
プレイ……どこかで聞いたフレーズだ。まあ、どう考えてもあいつしかいないよな。
とりあえずリアクションしてやるか。確かこの前、電話番号を交換してたはずだ。
《もしもし 明日は大丈夫ってことかな?》
「いくらなんでもあれは不審過ぎでしょ、普通ならブロックする」
《あれは捨て垢だからいいのいいの そんじゃ 明日の場所DMしとくね》 プーッ
「……」
[次の日]
こんなに朝早くから自分の知らない道を歩いている。
――しかし、人通りが少ない。ひとっこひとりいやしない。
彼女が送ってきた"HTMLファイル"が示す座標に随分と近くなってきたではないか。
どうやら目的地に着いたようだ。
"ここに入れ"と書いている――間違いない。(しかも何故か鍵がかかっていない)
(そろり…そろり…)
(ガシッ!!)
「だあ~~~っ!!!!」
死ぬほどビビった
「おいでなすったな さあ、こっちこっち」
細い道を抜けると少しだけ開けた空間に出てきた。
目の前の木々に隠れているが木造の建造物がかすかに見える。
これ――何の建物なんだろうか。ひどく朽ちているようだが……。
ここまでこの場所についての説明が一切無いことに戸惑っていると私の手を引っ張って中へと案内される。
彼女は無言のまま、ひたすら奥へと案内する。
私も黙ってそれに付いていくしかない。
「着いたよ、こっち」
おお~これは存外。綺麗な広間だ。
いかにも木造って感じの古い匂いはするが、埃っぽくはない。人の出入りが無いからだろうか。
「どう?気に入った?」とばかりにニコニコしながらこちらの様子を窺ってくる。
――中々いい場所じゃないか。情緒があるってゆーの?よく分らんがそんな感じだ。
そう思っていた矢先だ。彼女が広間の隅からブルーシートを取り出して中央に広げ始めた。
ここで全てを察した私はただ黙って眺めることしかできなかったのだ。
「それじゃあ"一肌"脱いでもらおうかな~」
おいおいおいおいおいおいおいおい
ああ、もうどうにでもなれ。
気づいたときには塗料でベトベトになった刷毛で顔面をペイントされていた。
「うえぇ…… このまま全身塗る感じですかねえ」
「何を今更~ そんなこと言ってるけどホントはやりたいって顔してるじゃん?」
「ばかやろぅ/// そんな訳ないだろぉ? こっ 今回だけだからな!(建前)」
もう口やら鼻の中にどんどん塗料が入ってきて滅茶苦茶だ。
「あははは やっべえw」
「服汚れるから私もそろそろ脱ぐわ~」
「いいな~青きれいだなあ~」
「今どうなってるの……」
「青も羨ましいけど私はこの色で…… こんなことするの初めてだからめっちゃ緊張するなあ~」
「よ~しやるぞ 今からやっちゃうからね……」
「ん~~~~www」(気持ち悪い)
「うわぁ~めっちゃお肌に悪そうこれ……」
「背中塗ってあげよっか?」
1 2
KutoDataBase | プライバシーポリシー・免責事項・利用規約